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40歳になると、さすがに諦めがつく。これまで結婚にたいする漠たる
期待や憧れはあったが、実際的に前向きな考えを持つほどの情熱も無く、
ただ時は流れ今日に至ってしまった。
時々不思議に思う。なぜ自分はこうも女性に対して素っ気無い態度をとって
しまうのだろう。別に嫌いなわけじゃない。いや、むしろ好きな方だ。しかし、
今までに言い寄る女性は何人かいたが、どうしても避けてしまう。もしや、
俺はホモか?と疑い、そちらの可能性も考えてみたがも、それはまぁ無かった。
それにしても本当に不思議でならない。俺はどちらかというと淋しがりやな
方で、とてもじゃないが一人旅なんかできないタイプだ。彼女ができれば、さぞかし
楽しいだろうなぁと、人並みに妄想を膨らませることもある。そう、俺はごくごく
普通の男だ。だけど、どうしても今はまだ独りでいたい。孤独で淋しいんだけど、
女と付き合う気がしない。もう、自分で自分がわからない。どうなってるんだ?。
そんな俺の心のよりどころは、15歳離れた妹の存在。親がいなくなった今は
二人で支えあって生きている。この妹がそばにいてくれるから俺は淋しさに耐える
ことができているのだと思う。このまま一生妹と暮らしてもいいかなとさえ
思っている。口に出したは無いが。
最近妹に彼氏ができた。まぁ、それは自然なことだと思う。かすかな嫉妬心は
あるが、自分の感情は制御できている。妹が連絡なしに外泊した日も、俺は
咎めはしなかった。妹がいつの日か俺のもとを去るのは自然のことわり。
結婚に自ら憧れを抱いておりながら、妹のそれを少しでも妨げるようであれは、
その罪は重すぎる。、俺の気持ちはこのさい二の次にして、妹の恋愛を応援して
やるくらいでなければ、兄としては失格である。
ある日、仕事の帰りデザートのケーキを二人分買う。不定期的にだが、
俺はこうしてたまにデザートを買って帰るのだ。しかし、この日は妹は家に
いなかった。まあ、一日ぐらいはもつだろうとケーキを冷蔵庫に入れて、一人ぽつねんと
コーヒーをすする。
深夜、突然電話が鳴り響いた。病院からの電話で、話は彼氏の運転する車が事故って
助手席にいた妹が重症とのことだった。それを聞いた俺は、驚くほど冷静で、まったく
動揺することもなく、ゆっくり身なりを整えてから妹のいる救急病院に向かった。
まず、俺を出迎えてくれたのは看護士。それから車を運転していた彼氏。彼氏は頭に
包帯を巻いていたものの、軽症のようであった。が、えらく狼狽していた。
「すみません・・・・すみま・・せん・・・す・・・み・・・ま・・・・せん・・・・」
涙を流しながら何度も俺に頭を下げている。
「もう、いいから。君は大丈夫なのかね?」
「は、はい・・・・でも・・・」
するとドクターが現れ、俺を別室にうながし妹の症状について説明した。それは悲惨な内容
だった。生命は辛うじてとりとめたが、全身火傷、四肢切断、顔面左半分欠損。
赤の他人がはたで聞いても足がすくむ話だった。が、またしても俺は心の均衡をたもって
いられた。自分でも不思議に思う。なぜ俺の心は揺れないのか?。
10日間が過ぎた。意識を取り戻した妹と面会した。快活だったかつての面影は無く、顔面も
火傷と裂傷により表情というものが消えていた。彼氏もすぐに見舞いに来たが、一度で恐れをなして
その後はもう来なくなった。妹がつぶやいた。
「死にたい・・・」
俺はこの気持ちを否定はできない。俺だってこうなったら死にたいと思う。しかし、妹には
俺がいる。
「お前の面倒は俺が一生みるから、心配するな」
ここで俺は、ハッと気付く。ああ、なるほどなぁ。だから俺は独りだったんだ。俺が、いかなる
事態にも動じないのは、運命を信頼しているからである。この世はうまいぐあいに仕組まれていて
心を揺さぶる数々の仕掛けが用意されている。そのカラクリに気が付けば、人生を悲観
することは無くなるのだ。と、言いつつ、俺は妹がいなくなって一人ぼっちになってしまうことを
恐れている。
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