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夜、なかなか寝付けずにいた。ふと、なんとはなしにテレビのスイッチを
つけると、ウサギが野原を飛び回るアニメーションが映し出された。
買ってねー 買ってねー・・・ グーチョキポン グーチョキポン・・・♪
素人女性風の無機質な声で、こんな歌が流れる。どうやら駄菓子のCMのようだ。
最後、価格表示とともに本商品の画像が映り
「お店での万引きはやめましょう。先日、小学5年生の○○君は、万引きをした
直後、交通事故でなくなりました。」
と、画面下に注意を呼びかける文章が添えられる。なんだか気分の悪くなるCMだ。
なんだよ「グーチョキポン」って?。
この間の地震で家を失い路頭に迷っていると、親戚を名乗る初老の紳士から
とある居住空間を提供された。他に頼る当てもなかったので、甘えることにしたが、
まだ、新しい環境に馴染めずにいる。なにせ、巨大な温泉旅館の宴会部屋をたった
一人で貸切の状態なのだから。だが、2〜3日すると顔なじみの従姉弟達も同じ部屋に
身を寄せるようになっていった。今回の地震では俺の他にも多くの親戚が家を
失っている。親達は仕事の都合で地元をはなれることができなかったので、
子供達だけがここに来たのだが、全員この温泉旅館の主が
自分の親戚であることを今まで知らずにいた。主の申し出があって初めて知ったのだ。
詳しくうかがうと、主は今はなき俺のお袋の兄だと言う。そういえば過去に
お袋からそんな親戚がいるようなことを聞いたことがあった。しかし、その一族は
ヤクザがかっていたらしく、それを嫌ったお袋はとうの昔に絶縁したとのことだった。
大部屋に一人っきりでいた時は淋しかったけど、同居人が5人増え、年下の吉晴が
ゲーム機を持ち込んでくれたので、たいくつすることもなくなった。そしてなにより
一つ下の順子が来てくれたのが嬉しかった。いとこどうしであったが、俺達は
密かに惹かれあっていたのだ。
館の主は、震災地の復興が完全に完了するまで、ここにいてよいと言う。
衣食にも事欠かず、温泉にも入り放題。願ってもいない夢の様な環境だった。
しかし、このまま何もせず厄介になってばかりいては悪いと思い、俺は一番の年長者として
旅館の手伝いを申し出た。しかし、オフシーズンのせいか宿泊客はほとんどおらず、
やることといったら掃除か雑草の除去くらいであった。それでも、何もしないよりはマシ
と思い順子とともに引き受けることにした。俺は除草、順子は館内の掃除をすることになった。
俺は最初、たかが除草となめてかかっていたのだがこの考えは甘かった。とにかく旅館の敷地は
広大で、一日二日で済む仕事では無いとすぐに気付かされた。しかし、一度引き受けてしまった
仕事。途中でやめるわけにはいかない。主から除草道具を借りて地道に作業を続けた。
エンジン草刈機や強力なガスバーナーなど初めて手にする道具もあったが、使いこなせる
ようになると、地味な作業が楽しく思えてきた。
一ヵ月後、旅館に団体客が訪れた。総勢300名以上。こいつらだけで丸二日間
旅館を貸しきるそうだ。この団体の毎年の恒例行事で、昼夜問わず宴会で騒ぎ
つづけるのだと言う。過去、一般客の苦情が殺到したので数年前から貸しきることに
なったそうだ。今年は俺達の部屋だけは特別に残しておいてくれることになったのだが、
主に「騒がしくなるが、我慢してくれ」とたのまれた。もちろん俺達は文句を言える立場に
なかったので、その時は快く了解した。
駐車場を埋め尽くす黒塗りの車。それにまじって赤や黄色のフェラーリや観たことの無い
スポーツカーが数台。これをら見ただけでもすぐに解る。こいつらはヤクザだ。
そしてその大元締めは、俺の親類である旅館の主。
俺達も本会場の隅にまねかれ、そしてほどなくして宴は始まった。。だが予想とは裏腹に最初は
粛々と幹部らしき人物のスピーチが続き、会社の忘年会のイメージなんかよりも、ずっと
静かな印象だった。そして、乾杯の後、酒がまわりはじめると、会場は少しづつ賑やかになって
いった。しかし、アルコールに弱い俺は早々に退散。酒を注いだり注がれたりするのも
俺は苦手だった。一人部屋に戻って布団にくるまっていると、深夜いたる方向から奇声やら
叫び声が聞こえてきた。ああ、なるほど。これじゃあ苦情も出るわけだ。だけど
我慢できないほどでもない。こうして布団にくるまっていればすぐに静かな朝が来る。
俺はそう考えた。しかし、順子達の帰りが遅いことに気が付き、俺は部屋を
出て迎えに行くことにした。宴会場に向かう途中ロビーを通りがかり、そこで異様な
光景を目にした。床一面ゲロの海。強烈な異臭が鼻をつく。破天荒なヤクザ者とはいえ、
自分が飲める量くらいわきまえているはず。なのにこの有様はいったい?。俺はゲロを
踏まぬようピョンピョン飛び跳ねながら廊下にでると、まかないさんと思しき女性が
仰向けに倒れているのを見つけた。白目をむき、口からは嘔吐物が溢れている。息を
している様子がない。急性アルコール中毒か!?。急いで人を呼ばないと!。俺は大勢の
人の声が聞こえる宴会場を目指し走った。
「誰かっ、誰か来て下さいっ」
そう叫びながら宴会場に飛び込むと、今度は全裸の人間が血まみれになって天井から吊るされて
のが目に飛び込んできた。
「おう、にいちゃんもやるか?」
ヤクザ達は、人間の死体(?)を肴にして酒盛りをしていた。あの生贄が誰なのかは解らないが、
すでに旅館全体が異様な空気に包まれていた。直感が告げる。逃げなくては。
だがその前に順子たちを探さなくてはならない。俺はもう一度ロビーに向かった。すると
キエエエエェェェーッ・・・・ ギャアァァァァァ・・・・・
と、またもや奇声がこだました。ロビー奥の階段から吉晴が駆けずり下りてくる。
「助けてぇーっ」
その背後からセーラー服の少女が日本刀をメチャクチャに振り回して追いかけてくる。奇声
はこの少女が発していた。吉晴以外にも何人か子供達が半狂乱になって逃げ回っている。刀に切り
つけられたのか、血を流している子もいる。そしてとうとう吉晴が切り殺された。俺はロビーに
あったソファーを持ち上げ、それを盾にして少女に突進した。少女がソファーと壁にはさまれ身動き
が取れなくなった隙に俺は素早く刀を取り上げた。すると奇声が止まり、少女は放心状態となった。
いったいこの少女は、どうしたというのだろうか?。そしてこの日本刀・・・。ますます
順子のことが心配になってきた。どうか無事でいてくれ。俺は、再び自分達の部屋に向かった。
すると、部屋の前の廊下の隅に、あってはならないものが・・・。廊下の赤い絨毯の上に
順子の頭がポツンと置いてあった。そばに胴体は無かった。
ここにいる奴等はただのヤクザとは違う。狂っている。俺は倉庫に行き、ガスバーナー
のタンクを背負った。そして2000℃の炎で酔いつぶれたヤクザどもを焼いて回った。人間の顔を
バーナーで炙ると、焼け焦げるというより溶けるといった感じで崩れていった。そして焼かれても
なお俺に勢い良く飛び掛ってくる奴は刀で首をはねてやった。タンク内のガスがなくなると、
今度はチェーンソーでヤクザを刈った。しかしそうこうしているうちに、少しヤクザが可哀そうに
思えてきた。ヤクザといっても、俺と同い年くらいのもいるし、その女房や子供もいたりする。それら
全員を殺すのは気が引けたが、もう止まらない。悲しいけど、自分の殺戮行為を止めることが出来なく
なってしまった。殺したくないのに殺して回っている。女子供関係なく。涙を流しながら。
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