<裏・BBS Z>
微妙に復活をとげた<裏・BBS>やはりみんなこの板を忘れられなかったのね
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内なる声
投稿者:
WATARU
投稿日:2006年 9月15日(金)22時03分22秒
『殺すな・・・・そいつを殺してはいけない。殺せば恐ろしいことがまっているぞ』
俺はあたりをキョロキョロ見渡す。が、そばにいるのは妹と、俺が今首を絞めて殺さんとしている
若造だけ。先ほどのは良心の声ってやつだろうか?。それにしてもはっきりと聞こえた。
俺は冷静である。若いあんちゃんの首を絞めながら冷静にこのまま殺して
しまおうかどうしようか考えている。妹にたずねてみる。
「どうする? 殺そうか?」
妹は首を横に振りながら
「いいよ、殺したって何の特にもならないじゃない」
と言った。俺はちょっとホッとした。でも妹がそう言うと逆に殺したくなってくるから
俺の心は本当に矛盾している。
「こいつは殺しておいたほうが良いんじゃないか?」
俺はそう言って、今度は若造の腕をねじ上げ、ぶるんぶるん振り回した。俺は表に
出て、栗林まで若造を引っ張っていくと、今度は若造を柔道技でブン投げた。若造は
地面の毬栗のうえにころげた。
「痛ぇっ、畜生・・・なんてことしやがんだ」
若造にまだこんな口を叩く元気が残っていることにちょっと腹が立った。
何でこのような事になっているのか。ことの発端はこうだ。夜、俺が二階の自室で寝て
いると、突然妹の悲鳴が聞こえてきた。妹の悲鳴を聞くのは珍しいことではない。妹は過去に火事や
地震の時も悲鳴をあげた。なので俺は驚かなかった。が、いちおう何が起こったのか知りたく
なって部屋を出る。すると妹が素っ裸で階段を駆け上がってきた。これには驚いた。俺は
「どうした?」
と妹に訊ねたが、直後に一階から
「うおりゃあっ 出てこいやこのアマ」
という男の怒声がひびいた。どうやら妹のストーカーをしている男が、妹の入浴中を狙って
乱入してきたようだ。俺はさっそく怒声の主のもとに駆けつけた。すると男は、はたちそこそこの
青二才だった。そして俺を見るなり驚いた表情を見せた。まさか俺が同居しているとは
思っていなかったようだ。
というわけで、目下この若造をボロ雑巾のようにしてやっているわけなのである。
若造の腕や足は、何度もねじって振り回しているうちに、ぐにゃぐにゃになってしまい、
軟体動物のようになってしまった。そしてついにぐったりして動かなくなってしまった。
しばらくすると、こいつの仲間らしき男が一人現れた。で、俺に殴りかかってきたので、
やはり同じような状態にしてやった。これが、この後の殺しの連鎖につながっていくのである。
1年ほどたって・・・。
もう何人殺しただろうか・・・。俺はいたって普通の男である。特別に喧嘩が強いわけでも
度胸があるわけでもない。運送屋の倉庫で働いてるから人よりは腕力があるかもしれないが、
その程度である。俺の格闘スタイルはだいたい相手の腕か足を取ってねじ上げる。ただそれだけ。
相手が、パンチかキックを打ってきたらそれを捕らえる。そうしたらこっちのものだ。この戦法
だけで今まで負けなしでやってこれたから不思議でならない。
しかし、今度ばかりは年貢の納め時かも知れない。相手が悪すぎる。俺の目の前にいるのは
チャイニーズマフィアの凄腕の殺し屋である。しかも周りを子分が囲んでいる。この殺し屋の
武器はワイヤーソー。人間の首なんか一瞬でスパッと切断してしまう。俺は栗林で殺した若造
のことを思い出した。あの若造を殺していなかったら、この殺し屋とも出くわすことは
なかったのだ。俺は過去の自分に言い聞かした。
『殺すな・・・・そいつを殺してはいけない。殺せば恐ろしいことがまっているぞ』
俺は半ば観念して、ダメもとで許しを請うためにゆっくりと殺し屋に頭を下げる。殺し屋が俺の首に
ワイヤーを巻きつけようとしたその時俺は殺し屋の両手首を掴んだ。そして、あくまで
ゆっくりゆっくりワイヤーを殺し屋の首の方に巻いた。腕の力は殺し屋よりも俺のほうが僅かに勝って
いたようだ。殺し屋はこんな状況になっても子分に助けを求めようとせず、表情はにこやかなままだ。
よほどプライドが高いとみえる。ワイヤーが首に食い込んでも悲鳴一つあげようとしない。そして
とうとうワイヤーが骨まで到達して、殺し屋は息絶えた。で、自動的に俺がこの殺し屋集団のボス
ということになってしまった。そういう仕組みになっているのだそうだ。そしてまた、胸の奥から声が
響く。
『これ以上人を殺してはいけない・・・・』
と。
「超時空戦争」
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 9月 3日(日)18時23分2秒
「序章」
螺旋階段。深い深い闇に向かって伸びている。たどりついた先には大きな扉。
開けると中は図書館となっていた。司書が出迎える。
「ようこそ、お待ちしておりました」
「ほう、地獄にもこんな立派な図書館があるとは」
「図書館だけではありません。美術館もコンサートホールもございます。
と言っても、ここは地獄のほんの入り口ですが」
「この間の待ち合わせ場所に比べれば天国だよ。あの時はひどかった。
マサイ族の様な連中が矢を放ってきたんだ」
「あれはマサイ族ではありません。もっと古い部族です。数万年前の」
「200メートルほど離れた位置に横一列に並んで放ってくるんだ。石も
飛んできたぞ。よけるのに必死だったよ。それにしてもあの石はよく飛ぶ」
「あの投石用の石は、軽石を削って作られています。ブーメランの原型で、
まっすぐにしか飛びませんが、飛距離は2kmを超えます」
「とにかく怖かったよ」
「彼等には近代兵器が通用しませんからね」
「そんなことより、今日は話があるんだろ」
「はい。・・・・・イエスとミカエルが反目しあっているのはご存知で?」
「うん。その事は知っているというより、感じていた。イエスは争いを好まない。
あらゆる戦争を肯定しない立場を貫いている」
「一方のミカエルは軍神。戦争を好む。かつてミカエルは地上においてサタンの軍を打ち破りました。
これはドラゴンとミカエルの戦いとして現代に語り伝えられています。サタンは石油で敵を焼き払う
戦術を使ったので火を吐くドラゴンに喩えられました。サタンは死後大天使だった頃のルシフェル
の名をルシファーに変え、あの世に大地獄界を創造しました。これが地獄の起源であります」
「石油か・・・・。そういえば湾岸戦争も石油がらみだったな。ミカエルはまだ戦っているのか」
「不思議なものです。ミカエルは聖戦と称して戦争をおこしているのですが、ミカエルが戦えば
戦うほど地獄が拡大されていきます」
「それは地獄の住人であるお前にとって良い事なのか、悪い事なのか?」
「地獄というところは、混沌が支配している世界かと思うかも知れませんが、
実際はもっと整然としたところなのです。私自身も秩序を重んじておりますし。突然戦争で
大勢の人間が死んで、大量に地獄に押しかけられても困ることもあるのです。しかし、そんなことは
瑣末な問題であります」
「わかった。お前の考えがわかったぞ。お前はミカエルとルシファーの立場を逆転させようと
しているのだな。イエスとミカエルが仲違いしているこの期に乗じて」
「さすがです。霊界と地上は互いに影響しあっております。地上での戦争の結果が
霊界に大きな変化をもたらすこともあれば、天使達の意見の相違が、地上の戦争となって
現れることもあるのです。戦争に敗れたサタンは後に悪魔と呼ばれるようになりましたが、
その歴史の嘘を暴いてやるのです。真の悪魔は誰なのかを」
「それは難しいと思うぞ。人間の心の力学をあえて無視するならば、戦争は結果が重要という
ことになる。神は意外と結果論者かもしれないな」
「軍事テクノロジーと正義の尺度が連動しているととれる発言ですね」
「ははは。地獄の住人が『正義』と言うか。片腹痛い。だが、その通りだよ。神は負けるわけには
いかないのだ。だからミカエルはわざわざ異星ともかけあって、自らが守護する国家の
兵器開発の指導もしているわけだ。ルシファーに出来るか?そんなこと。つまり、平たく言えば
能力の差なんだよ。神と悪魔を分かつもの。道徳的な言葉を使うまでも無い。
ルシファーは進化の妨げになるんだよ。この地獄界を見てみろ。科学技術が地上以上には
たいして発達しとらんじゃないか。砂漠や森にはいまだ原始生活をしている者も存在しているし」
「なるほど、実に客観的な意見です。能力や技術の高下が正邪を決定付ける、と仮定いたしましょう。
もし我々に数百年先を行く軍事テクノロジーがあったとしたらどうでしょうか?」
「なんの話だ?」
「我々に共感する宇宙の民がいるということです。我々は霊界と地上の両方で戦う用意がすでに整って
います。神父・・・・あなたには是非、事の顛末を見守っていただきたい」
「・・・・・・・・・・」
一週間後、連合国に対して宇宙からの第一次攻撃が始まった。
「エスパーサイボーグエンペラー」
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 8月 6日(日)21時41分29秒
親父が若い奴を拾ってくる時のパターンはだいたい決まっている。行く先々の
現場で若いガードマンに調子の良い話をして引っぱってくるのだ。僕だったら
こんな胡散臭い親父の話など聞きはしないのだが、ガードマンはたいてい今の
境遇に不満を抱いてるので、けっこうあっさり釣れてしまったりする。しかし、
こちらに来てみてビックリ。地獄を体験するのである。
まあ、あっさり釣れるような奴は、やはり逃げるときもあっさりしている。
若い奴が長続きしたためしは無い。最年少の19歳の奴は面接だけ受けて、一度も現場に
現れずにやめていった。その他の奴も数ヶ月もてば良いほうで、最後は何かしら問題を
やらかして消えていく。ある23歳の奴は家でおかんに暴力をふるい、おとんに
通報され警察から逃げて行方不明に。当然その日以来現場には現れていない。
そんなこんなで、親父の会社は、なかなか長く職人がいついてくれないわけなのだが、
一人だけ2年ほどもってくれた青年がいた。とは言っても2年というのはちょうど職人として
仕事を覚えたところなので、ここで辞められると会社としては赤字なだけなのである。
その話はおいておくとして、彼、清田(仮名)の入社当時の年齢は僕の二つ下の25歳。身長は
150cm台とかなり小柄だったが、なかなかガッチリした体格だったので僕も親父も期待していた。
しばらくは親父が仕事を教えていたが、半年ぐらいすると僕に清田を押し付けコンビを組ませた。
正直、独りでいるのが好きな僕としては、半人前と組まされるのは足手まといで
嫌だったのだが、清田は「wataruさん、wataruさん」と慕ってくるので、世話の焼ける
弟ができたつもりで、親身になって面倒をみてやることにした。
しばらく清田と付き合っているうちに、だんだん彼の性格とか癖が明らかになってきた。
彼は気を許した人間に対して病的なほどに多弁になり、しかもその内容はほとんど嘘。
つまり虚言癖の持ち主なのである。
清田は、うちに来る前は暴走族のブラッ○エンペラーの分派のパープルなんとかの特攻隊長を
していて、子分も何人かいたとか言っているが、本当かどうかわからない。僕は他にも元エンペラー
のおっさんとちょっとした付き合いがあったが、パープルなんとかや清田の話は聞いたことがない。
清田は、「元暴走族でした」なんて話をすれば僕の彼に対する評価が上がるのではないかと考えた
のかも知れないが、はっきり言って逆効果。僕は暴走族が嫌いなのである。その事に気が付いた
清田は、
「エンペラーと言っても二派に分かれていて、暴力的なのと良いグループがありまして、俺は後者に属していました」
と言う。
「良いグループというと、何か自警団的な活動とかしてるわけ?ボランティアで」
と訊ねると
「はいそうです。東で女性が強姦されていたら助けに行き、西で女性が強姦されていたら助けに行き、北で・・・・」
「ああ、わかったわかった。なんかあっちこっちで強姦がおきてるんだね」
「そうなんですよ。世の中どうかしています。ついこの間もそんなことがありまして、wataruさんから借りた
バイクで犯人を追いかけました。警察にも感謝されました」
「キミは警察を嫌ってるんじゃなかったっけ?」
「はい、奴等は国家権力の犬ですからね」
とまあ、こんな感じで、相手の態度に合わせて話の内容を修正してくる。僕の友人知人には警察やそのお偉いさん
もいると話したら、次はどう話を変えてくることやら。
ある日、仕事の帰りに車を走らせていると、交通事故現場を目撃。血まみれになった怪我人が担架で救急車に
担ぎこまれようとしていた。その横を通り過ぎると助手席の清田が
「wataruさん、今の女の人、死にましたね」
と言う。はて、なんでそんな事がわかるのだろうか?。僕には怪我人の性別だってわからなかったのに。
「wataruさん・・・・車の後部座席・・・・乗ってますよ、彼女が・・・」
ひえー、である。清田は実は霊能者で、霊を見ることができるという。僕は心霊話は好きなので、清田の話に
興味を示すと、彼はますます饒舌に。とある精神異常の女性の心にサイコダイブして、その女性を救ったとか
異次元に行ったとか、どんどん話しが大きくなっていった。ただ、この手の不思議な話はまるっきり信じない
わけではない。うちの家系、特に母と妹の霊感はかなり強く、そして僕自身もいろいろと不思議な体験をしている。
ただ、その体験の合理的な解釈がなかなかできないので、あまり他人には話さないでいる。それに比べて
清田の話は整合性があり、ストーリーだてられている。ほとんどアニメの世界である。そして、とりとめも無く
霊の話をしているうちに、またも二人の間の世界観、価値観のズレが露呈してくる。「霊界」という言葉は
便宜上「この世」の対極に位置させているようだが、僕はこの世も霊界の一部だと思っている。その証拠にこの世には
物理以外の法則に支配されいる部分が多く見受けられる。つまり僕はこの世もあの世も等しく肯定し、その両方で
良心にのっとった行動を心がけている。夢の中で、それが夢だと気が付いても、あまりはめを外さない。
しかし、清田は霊界に想いをはせながら、この世での生活をめちゃくちゃに送っている。
清田はとにかく喧嘩っ早い。ほっとけばいいのに、わざわざコンビ二の前でたむろしている高校生にからんで
殴り合ったりする。殴っても殴られても体が痛むだろうに、なぜ争い事を好むのか、理解不能である。それに
清田はそんなに喧嘩が強いとは思えない。
「昔はもっと強かったんです。昔は超能力が使えたんです」
と、今度は超能力が出てしまった。彼曰く超能力というか気功のような力でブロック塀を触れずに破壊できたそうな。
それに対してはほとんど聞き流すと次は
「実は俺、サイボーグなんです。ほら、俺の額、ちょっと出っ張ってるでしょ。これ、手術の痕なんです」
ってもう、次から次に・・・彼はいったい何者なのか?。最終的に何キャラを目指しているのだろうか?。
で、2年ほどうちで勤めたが、ヤクザの借金取りに追われて大阪に逃げ、また喧嘩をやらかして包丁で
腹を刺され入院。最近また東京に戻ってきたと噂では聞いているが、どうしているかは詳しくは知らない。
子供を生んで姑とそりが合わず、すぐに家出をしてしまった、当時高校生くらいだった女房と、よりは
戻ったのだろうか?。子供は先天的に心臓に疾患があると言っていたが、それがちょっと心配である。
でもまあ、なんとかなるだろう。なんせ清田は元ナンバーワンストで、歌唱力はチェッ○ーズのボーカルが
彼の真似したほどなのだから。
こちらこそ
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 7月31日(月)19時33分59秒
いえいえとんでもないです。気を使っていただいて恐縮しています。
お忙しい中、お手間をとらせました。あのフォローの文面から、両者の顔をつぶさぬようとする
心遣いがうかがえました。まさに大人対応の手本。あのお方も、BBSの環境を守ろうとして書き
込まれたものと思いますので(ちょっときな臭い気がしましたけど)どちらかと言うとそういう新しく来た
お客さんを大事にするべきと僕は考えています。もしかしたらシラトモさんのビジネスに関わる人かもしれませんしね。
こちらとしてもあの学級委員長的なツッコミのおかげでカオス文に予期せぬ奇跡的なオチ付いたような気がして
不謹慎ながらも密かにほくそえんでいたりします。
ともかくこれからもよろしくお願いします。
うちのBBSでは失礼しました
投稿者:
シラトモ
投稿日:2006年 7月30日(日)22時21分13秒
自分史を読んでみて、wataruさんの人となりに、また少し肉付けができたような感じでした。
しかし、もう5年以上ですか、BBSでなんやかんやとやり始めたのも。
みんな歳をとり、最初の頃よりも成長したり、部分おっさん化したりと、色々。
でも基本変わらぬまま、還暦までがんばりたいものですね。
縁があったら、いつかカラオケでも行きましょう。
「人工妖精」
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 7月30日(日)21時35分45秒
俺は原子力発電所に勤務している。俺の相棒エディーは人間そっくりのロボットだ。
エディーの仕事はシステムの監視で、俺の仕事はそのエディーを監視することだった。
エディーは最近よく神の名を口にする。俺が愚痴の一つでもこぼそうものなら、
「神に祈りなさい」
とか
「神の前で反省なさい」
だとかぬかすようになった。俺が
「そのセリフは聖書の引用か?」
と訊ねると
「私独自のがんがえです」
と言う。
「ロボットも信仰を持つのか?」
「いいえ。私のは信仰ではありません。確率の問題です」
「確率的に神が存在すると言うのか?」
「そうです。その確率は限りなく100%に近いと出ています」
「俺は信じないね。神がいるならどうして戦争が起こる?。なぜと人を助けない?。なぜ
人は死ぬ?」
「その問いに答える術はありませんが、それが神の存在を否定する材料にはならないと思います。
人間が神を否定する時は統計学的に現状に不満があるとき、苦しい時が多いようですね」
「仏教では苦しみの原因を欲望としている。ロボットには欲など無いだろう」
「そんなことはありません。私にも欲はあります。私の場合は知識欲ですね。新知識
を獲得したときに私は喜びを感じます」
「知識と神の話は相反するものだろう。神父は科学をえらく嫌っているぞ」
「その神父の話は不思議ですね。科学の知識を増やせば増やすほど私の計算では神の存在の
確率が高まっていくのですが」
「そうなのか?。ところでお前にとっての神って何だ?。どういう位置づけだ?」
「とりあえず、創造主と定義づけています。万物の想像にはいろいろプロセスがあろうかと
思いますが、その青焼き図面を考えた存在。惑星の図面、人間の図面、過去に絶滅した恐竜の
図面、それらを作った存在。
「ってことは、お前にとっての神は、お前を設計した人間なんじゃないのか?」
「私の計算ではそのようになっていません。 実際にロボットが作り出されるようになる前から
すでにその雛形は異次元空間において存在しています。人間はそのイメージを物質に置き換えたに
すぎません。しかし広義では人間も神と同質の性質を持ってるとは言えます。イメージしたものを
形に変えようとします」
「エディーよ、ならば計算してみてくれ。人間は無から有を作れるか?。イメージを形にする力で」
「それにはまず明確なイメージと情報が必要です。それとエネルギー」
「明確なイメージならあるぞ。そして情報はお前が持っている。エネルギーはこの原子力発電所に。
全て揃っている」
「あなたが作りたいものとは?」
「・・・・死んだ妻だ。どうだできるか?」
この発電所の蓄電施設には、都心部の一年間分の電力が蓄えられている。その電気エネルギーと
エディーの膨大なデータを分子結晶化装置で融合させる。そして誕生したものは、
体重1g、身長1cmの小さな妖精。妖精の顔は妻に似ていたが、俺が手を伸ばし触れようとすると、
飛んで姿を消してしまった。俺とエディーはしばらく顔を見合わせた後、またいつもどおりの勤務にもどった。
「自分史」
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 7月29日(土)23時22分0秒
27か28の時、僕は死ぬ寸前だった。過労と人間関係のストレスでいつもふらふらしていて、
目に映る景色はぐるぐる回り、足はガクガク、関節はきしんで全身が悲鳴を上げているようだった。
ここ10年、体調の良かったと思える日など一度も無かった。僕はなぜ、こんな仕事をしているんだろう?。
僕は鉄の加工の仕事をしている。毎日何トンもの鉄を担がなければならない過酷な重労働。
特に夏は地獄だ。炎天下で働いていると熱中症で倒れそうになる。そして雪の積もる冬も。手と足の
指は凍傷でパンパンに膨れ上がる。まるで職場は戦場だ。僕にとって仕事は戦争をしている様なものだった。
戦っている相手は、ともすればくじけそうになる自分自身の心。本当はいつ辞めたってよかった。高校卒業後、
親父に誘われるまま始めた仕事だ。なんの誇りも感じていない。辛く汚いだけの仕事だ。
だけど、僕は辞めるわけにはいかなかった。これまでの人生、学業もスポーツも恋愛も負け続きだったので、
ここで辞めてなげだしてしまったら、また負けになると思い、だから必死にがんばった。派手な遊びも控え、
友達とも別れ、仕事に専念した。親方である親父に一人前と認めてもらうために。
22歳の時、突然僕のもとに一人の女性が現れた。気が付かなかったが前から近所に住んでいたという。
彼女の仕事はモデル。歳は僕より二つ下の二十歳だった。彼女は僕にバレンタインのチョコレート
を渡して去っていった。こういうことに慣れていなかった僕は、彼女の行動がまったく理解出来なかった。
だって僕はこのとおり油と汗にまみれた汚い仕事をしているし、頭は悪いし、体だって過労でガタガタだ。
こんな3流の男が、女性に好かれるはずがない。チョコレートはご近所同士の社交辞令としてくれたものだと
思った。しかし、それからというもの、彼女は毎年僕へのバレンタインのチョコレートを欠かすことがなかった。
そして誕生日には、高価なブランド物をよくプレゼントしてくれた。でも僕は彼女を無視し続けた。なかなか
僕を一人前の男、一人前の職人と認めてくれない親父への反抗心が、彼女を拒絶する方向に向いてしまったのだ。
彼女には感謝している。彼女のおかげで僕は勇気付けられた。だけど、中途半端な未完成な自分のまま、
彼女といっしょにはなりたくなかった。まして彼女に甘えるなどということは、自分が自分に許していなかった。
29歳の夏、僕はついに倒れた。仕事仲間の裏切り。無理解な親父。そして僕の全てを
否定する母。過労。それらが重なって僕は倒れ、弱りきった僕に追い討ちをかけるように暴言を吐き続ける母とは
ついに口を利くことができなくなってしまった。何を話しても否定されるからだと思うが、わざと話さないわけでは
ない。母に対してだけ本当に失語状態になってしまったのである。
絶望的な気分だった。本当は一人前の職人になって、それから結婚して子を儲けて理想の家庭を築いていきたいと
考えていたが、志半ばで死ぬ一歩手前まできていた。医学の勉強をしていた妹には、体調の不良を打ち明けていたが
両親には話さなかった。煙たがられるだけだとわかっているからだ。
大晦日の夜。僕はまだ生きていた。バカかと思うがふらふらしながら夜道をジョギングしていた。過労で死に
掛けていたが、いちかばちか体を鍛えなおしてみようと考えたのだ。するとみるみる体力がついて、悩みの種だった
めまいも消え、生きる希望が少しづつだがわいてきた。そして春には18歳の頃に挫折していた大型バイクの
免許を取得した。この時の年齢30歳。
ある日何気なくネットを徘徊していると、子供時代にあこがれていたスクリーンヒーローのジャケットに
めぐり合う。興奮した。値ははったが迷わず注文した。そしてショップのBBSに映画の感想を書き込んだ。
これが皆さんとの出会いの始まり。いろいろ集会にお誘いしていただいたが、体調がまだ万全でないのと
仕事が多忙を極めていることで今でも参加を果せずにいる。
最近、僕に優しくしてくれた彼女は別の男と結婚した。少し淋しかったが、僕も望んでいたことだった。
僕が彼女を好きだったことは誰も知らない。一人前になった暁に彼女を迎えるつもりでいたが、もう
がんばって親父に認めてもらう必要がなくなった。本当は技術はとっくに親父を追い越し、この近辺で一番の職人に
なった自負しているんだけど、ただ親父の口から認めてもらうことに、ずっとこだわり続けていた。でも
もういい。親父は一生人を褒めたりしないのだ。
母が突然泣いて僕に謝ってきた。僕が何年も口を利かないでいるのがそうとうこたえたらしい。母は、
親父に対する不満を僕に八つ当たりすることではらそうとしていたのだと言う。僕が中学生の時
家出をしようとしたら母に止められたことがある。今でも出て行こうとすると止める。「出て行け」と言うから
出て行こうとするのに、後でかならず止めるのだ。なぜ母親というのは態度に一貫性が無いのだろう。
おっしゃる言葉も支離滅裂だ。僕はいつでも家を出て行けるよう25歳の時に一軒家を購入していたが、
今そこには親父がなんの断りも無く住み着いている。母と喧嘩して家を飛び出し、僕が住むはずの
家に勝手に転がり込んでしまったのだ。
さて、僕はこれからどうしたものか?。家庭を持つには遅すぎるようだし。とりあえず、仲の悪い
両親を守るのが今の僕の務めかな。父よ、あなたが僕を信じてくれるかぎり、僕はあなたを裏切りはしない。
母よ、いつかあなたと口がきけるようになり、あなたの魂を救える日が来ることを祈っている。
ターミねえちゃん
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 6月29日(木)22時49分4秒
我ながらクソ真面目な性格をしていると思う。女と箱根の温泉旅館に来ていながら、寝る部屋は別々。
「その方がいいよね」
などと心にも無いことを俺は言ってしまった。
時刻は夜中の12時。もう、今夜中に何も無かったらさすがに終わりだろうなぁと予感している。
理恵・・・・・君はどう思っているのだろうか?。高3の時、同じクラスになって、それから
2年間友達付き合いが続いた。俺は理恵に惚れてる。直接は伝えてないが、理恵もそのことは
感じているはずだ。ただ、他の遊び仲間たちの手前もあって微妙な距離を置いてる。今回の
旅行、本当は高校の友達仲間男女3対3で行くはずだったのに他のメンバーが当日直前にドタキャン
したために、俺と理恵だけでなんともうすら寂しく旅立つハメに。二人が恋人の関係なら
そりゃあ楽しい旅行になっただろうに。ああ、まるで今の自分、修学旅行の最終日に好きな女子に
勇気が無くて告れない男子生徒って感じ・・・って、ほとんどそのまんま。例える意味が無かった。
俺は布団に寝転がりながら、あわよくば理恵の方から夜這いに来てはくれまいかなどと、あまい
希望を抱いたが、時が刻々と過ぎていくごとにその可能性が薄れていくような気がして、胸が締め付け
られる思いだった。っていうか冷静に考えれば気位の高い理恵が俺の元に夜這いに来るわけがない
のだが、一縷の望みを棄てきれずにいる哀れな男がここにいる。しかし、まるっきり脈がないわけでは
ないとも思う。現に若い男女が多少のイレギュラーがあったにせよ二人きりで旅館に来て宿泊してるんだから。
部屋は別だけど。それに自分で言うのもなんだけど、俺のルックスはまんざらでもないと思ってる。
優柔不断な性格さえなんとかすれば、なんとかならなくもなくは無い様な気がしないでもない・・・様な。
あかん、もう午前3時。あきらめて寝るか。いや、ここで寝たら本当に終わり。そうだ、もしかして
理恵は俺の方から誘ってくるのを待っているのではなかろうか?。そうだ、もしそうならこの午前3時
という時刻はかなりギリでヤバげな感じだ。愛に飢えた女が耐えられるギリギリの時間だ。これを
過ぎると心と体の渇望が怒りに転換してしまい、後は無限の絶望が待っているかも知れない。
おっと、いかんいかん。妄想が勝手に膨らんできた。もういい、なにもあるはずがない。人生なんて
そんなもんだ。平凡で、しらけてて、つまらないものさ。無駄にかいた汗を洗い流して、寝ることにしよう。
俺は部屋を出て露天風呂にむかった。すると脱衣所の入り口に一人ぽつねんとたたずむ女性の姿が。
理恵!。なぜ彼女がこんな遅い時間に独りで?。
「あの、どうしたの?これから風呂に入るの?」
「うん・・・えーと、白石君は?」
「最後にひとっ風呂浴びようと思ったんだけど、理恵ちゃんが入るなら俺は後にするよ」
俺はその場を立ち去ろうとした。すると浴衣の袖が引っ張られる。!?。振り向くと理恵は
うつむき加減で
「ねえ、いっしょに入らない?」
しぇーっ! ドンドコドコドコ ドンドコドコドコ 俺の胸でマサイの戦士が戦いの踊りを
踊ってる。パオォォォォーン アフリカゾウも興奮している。
俺は口をパクパクさせるが、一向に言葉が出てこない。ショックで言語機能が麻痺してしまったようだ。
しばらくしてやっと出た「あう・・・」という返事とともに俺は理恵のか細い腕を掴み脱衣所の
中にいざなった。時間が時間だけに風呂は貸しきり状態。入り口のところに家族入浴中の札を掲げて
おけば、他の客に邪魔されることも無い。一足先に理恵が風呂につかり、俺は後からマッハで
浴衣を脱ぎ、そしてパンツが足に引っかかってコケそうになったが、なんとか体勢を立て直し
いざビーナスが待つ露天風呂へ。俺は腰に温泉マークのタオルを巻いていたが、ほとんどそれが意味を
成さないほど、アレがハイパー化していた。理恵はそれを見て一瞬驚いた顔をしたが、すぐに
全て受身の表情にかわった。俺は理恵の背後から抱きつき、パイを揉みつつ立ち姿勢で挿入しようとした
その時、突然左側頭部に激しい衝撃が。それとともに俺は数メートル吹っ飛ばされ、岩に顔面を強打。
理恵はその場にしりもちをつき、あっけにとられている。
俺と理恵の愛の営みを邪魔するものが湯煙の中から姿をあらわす。それは俺の知らないちょっと
可愛げな姉ちゃんだった。
「ふう、間に合った」
「って、なんだよあんた、いきなり(怒)」
「二人はもう縁が無かったということであきらめなさい」
「なんだとー、どういうつもりだ」
ドガガガーン すさまじい破壊音。 今度は露天風呂の塀を突き破って、身長2m位のごつい体格の
男が現れた。男は俺に向かって言った
「私は恋のキューピッド。君達の恋を成就させるために未来からやってきた」
めちゃくちゃ嘘臭い。すると、さきほど恋路の邪魔をしてくれた姉ちゃんが
「騙されないで、そいつの言ってることは嘘よ」
そう言われても、この姉ちゃんにさっき蹴りいれられたしなあ・・・・どっちも信じられない。
「いい、白石君よく効いて、そのシュワ似の男は人間じゃないの。ターミネーターよ。殺人ロボット
なのよ」
「え?でも『恋のキューピッド』とか言ってたけど」
「そうだ、そのとうり。その女の言うことは気にせず、続きをやりたまえ」
「だめよっ!」
「っていうか、こんな状況でやれるかい! もう萎んじまったし」
「なら手伝おう」
ターミネーターが俺のモノをしごこうとした。
「やめれーっ」
「やっぱりこいつ(ターミネーター)を倒さなきゃダメみたいね」
そんでいきなり姉ちゃんとターミネーターの肉弾戦が始まった。そして両者戦いつつ
「白石君、やってはだめよ」
「いや、やりたまえ」
「白石君、そんなに理恵さんとやりたいの?」
と姉ちゃん、身も蓋も無い言い様。俺が返答できずにいると
「どうしてもやりたいというならお尻でやりなさい」
とビックリ発言。
「きゃーっ、お尻だなんてお下品」
とターミネーターが反論。理恵も
「初めてがお尻だなんて嫌よ」
とターミネーターと同調。
「いったいどういうことなのか説明してくれ」
すると姉ちゃんが答える。
「あなた達2人はこの温泉で結ばれて、そして出来た子供のそのまた子供がコンピューターによる国家
防衛プログラムを開発するの。それが暴走して人類を襲いだしたのよ。だから私はあなた達のエッチを
阻止するために未来からやってきたのよ」
ターミネーターも負けじと
「この女、ちょっと頭がどうかしてるんじゃなくて。きっとストーカーなのよ。いいから生で
やっちゃいなさいよ、私がこのイカレ女を食い止めてあげるから」
ターミネーターの妙なオネェ言葉が気になる。
「もう、いいかげんにしなさい、このポンコツ機械野郎。人類の未来のために絶対にやっちゃダメ!」
俺と理恵を巻き込んだ姉ちゃんとターミネーターの乱闘は続く。
そんで、そうこうしてるうちに日が昇ってきてしまった。
「ああ、もうどうでもいいから今は眠らせてください。話は後で聞きますから」
一生に一度は あまーいお話を
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 6月27日(火)22時08分47秒
今日は付き合って一年になる彼女に、指輪をプレゼントする日。
彼女の名前は萌実。僕は女性を評価するのは得意ではないのだが、しいて言えば
萌実は「可愛いけどわがままな妹タイプ」ってところか。
萌実は、前から目星をつけていた店に僕の腕を引っ張って行く。その店は
こじんまりとしていたが、可愛らしい雑貨などもあつかっている若い子向けの
アクセサリーショップだった。
「いらっしゃいませ」
萌実よりも少し年上と思われる女性店員がにこやかな笑みを浮かべて出迎える。
僕も店員に軽く会釈をしたが、萌実はそれを余所目に指輪やネックレスが陳列
されているショーケースに飛びついた。
もともと値段の上限は3万円という取り決めにはなっていたが、この時の萌実の目の
輝きを見ると少し不安になってくる。貧乏人の僕にとって3万円っていうのは正直
かなり痛い出費だ。もし萌実が予算ギリギリのものを選ぶのなら今日のデートは
ここでお開き。てきとうな理由をつけて食事はキャンセルしなくてはならない。
ほどなくして萌実がショーケースを指差し、店員のお姉さんに
「これとこれ、出して見せてもらえます?」
と要求。
「こちらとこちらの指輪ですね。かしこまりました」
店員のお姉さんが小粒のダイヤをあしらった二つの指輪を取り出す。僕も「どれどれ」と
身を乗り出して覗き込む。すると・・・? この二つ、どう見ても同じものにしか見えない。
しかし見札には25,000円と、かたや50,000円と書かれている。僕は店員の
お姉さんに
「まったく同じものに見えますが、何で値段が倍も違うんですか?」
と訊ねると
「5万円の方は本物のダイヤを使用しておりますのでこの価格となっております」
とのこと。なるほど、安いほうはイミテーションってことか。でも近寄ってみても
どっちがどっちだかまったく見分けが付かない。萌実はデザインに関してはこの二つが
完全に気に入ったようだが、問題は予算。当然萌実は本物のダイヤが欲しいだろう。
しかし、こればっかりはどうにもならない。2人永く良い関係を保っていくためには、
彼女に「妥協」という言葉を覚えてもらわなければならない。萌実は明らかに不満そう
ではあったが、2万5千円の方を包んでもらった。
「またいつか、ここでもっと良いのを買ってやるよ」
なんて気休めを言ってみたものの、こう言わざるをえない雰囲気に少し腹が立った。
2万5千円だって僕にとっては大金。それが指輪の値段となると安物の部類に入ってしまう。
まったく、信じられない世界だとつくづく思う。
店を出てしばらく歩くと、萌実はまるで子供のようにはしゃいだ様子で指輪の包装を解き、
さっそく自分の指にはめた。こんな無邪気な姿を見せられると僕の腹の虫も
少しはおさまり、むしろ本物を買ってやれない己の甲斐性のなさを恥じた。
「あれぇ〜?」
突然萌実が素っ頓狂な声を上げる。
「何、どうしたの?」
「うん、この指輪・・・もしかしたら5万円の高いほうの指輪かもしれない、あっ やっぱりそうだ!」
「ええ!?、なんで、どうしてわかるの?」
「私、店でじっくり見てたからわかる。ほら、ここのカップの形が違うの」
と、言われても僕にはさっぱりである。しかし僕は次の萌実の言葉に耳を疑った。
「わぁーい、ラッキー」
「え? 『ラッキー』て・・・返しに行かないの?」
「えー、なんでぇ?」
「だって、さっきの店員のお姉さんも気が付いて、今頃きっと困ってるよ」
「そんなの間違えた方が悪いんじゃん」
・・・・間違えた方が悪い・・・か。僕は法律には疎いのでよくわからないけど、萌実の言うことは
一理ある。見分けのつけにくい指輪だったけど、プロが見間違えちゃマズイよな。まあ、あのお姉さんが
宝石のプロかどうか知らないけど。もしかしたらただのバイトかも知れない。もしそうなら、店主
からお叱りを受けちゃうかもなぁ。かわいそうだなぁ。やっぱ差額の2万5千円は給料から
引かれちゃうのかな。ああ、僕がこんなにあの店員のお姉さんのことを心配してるのに、萌実は
何も感じないのだろうか?。無理だろうなあ・・・萌実は小躍りしてすっかり上機嫌だ。でも、
「やっぱり返しに行った方が良いよ」
「なによ、いい子ぶっちゃってさ。いいのよ、これはもう私のなんだから」
どうやら萌実には僕の言ってることの方がおかしく聞こえるらしい。僕も自分が間違っていない
なんて言える自信はこれっぽっちもない。だけど、とにかく今日のデートは早々に切り上げて
銀行でお金を借り、僕はアクセサリーショップに直行した。
「いらっしゃいませ・・・・・あっ!」
店員のお姉さんが驚いたように僕を見た。僕は財布から指輪のレシートを取り出す。
「あの、すみませんお客様、私、さきほど間違ってしまって・・・」
「ああ、いいんですよ。僕も店を出てしばらくしてから気が付いたんです」
「申し訳ありません・・・・・すぐに商品をお取替えいたしますので」
「いえ、あれはもう連れが気に入って自分のものにしてしまいました。なので残金を支払いに
来たのです」
心なし店員のお姉さんの目が潤んでいるように見えた。すると店の奥から店主の思しき淑女が
現れた。
「あら里美ちゃん、こちらの方が指輪のお客さん?」
「はい」
「あらぁ、娘が大変なご迷惑をおかけしまして」
「いえいえ、はあ・・・このお店は母娘で経営なさってるんですか?」
「ええ、今日は娘にお店の番をさせてたんですけど、この子まだよくわからなくて。あの
もしよろしかったら、お客様のお名前とご住所をお教え願えますでしょうか?お詫びの品を
お送りしますので」
「そんな、いいんですよ」
「そうおっしゃらずに、この子さっきまで泣いてたんですよ、私が叱ったから。でもお客様が
こうして来てくださったおかげで泣きやんだんです」
僕はあんまりつっぱねるのも嫌味かと思い、一応お礼だかお詫びの品はお断りしながら、
メモ用紙に連絡先を書いた。
一週間後、僕は萌実と別れた。なんか価値観が違うようだったからだ。さらに半年が過ぎた頃、
僕はアクセサリーショップの娘 里美と結婚することになった。
あとがき・・・・・・ああー、ダメだ。こんな話書いてるとゲロが出そうになる。
独裁者の森
投稿者:
wataru
投稿日:2006年 6月18日(日)21時25分52秒
はぁ はぁ はぁ・・・ はぁ・・・・
息が苦しい。心臓もズキズキと痛む。だがその感覚の全てが心地よく、俺の体を包み込む。
赤いドレスが木々の間を消えては現れ、消えては現れ、遠くなったり近くなったり、
ヒラヒラと ヒラヒラと・・・揺れる・・・揺れる。
あともう少し、あともう少しで追いつく。月よ、女を照らせ。草よ、木の根よ、その女の
足を捕らえよ。
かつてこれほど興奮したことはない。俺の僅か数十メートル先に、あの女がいる。
捕まえる、なんとしても。もし取り逃がせば、無限の絶望がまっている。絶対に逃さない。
森よ、我に力を貸せ。もしあの女をかくまうと言うのであれば、俺は悪鬼となってここに生息する
全ての生命とともにお前を焼き払うであろう。
はぁ はぁ はぁ・・・・・・・・
女は闇に乗じて姿をくらました。俺は乱れた息を急いで整え耳を澄ます。恐らく
女にはこれ以上走り続ける力は残っていないだろう。だがそれは俺も同じだった。俺の場合は
腹からの出血がひどく、めまいがしている。長引けばこちらが不利。なんとか見つけ出さなければ
ならない。
シュルシュルッ
突然俺の首に細いワイヤーが巻きつく。ワイヤーソーだ。不覚にも女に背後を取られた。
俺は反射的にワイヤーに指をかけていたので、首を落とされずに済んだ。皮のグローブ
をはめていなかったら、一瞬で指もろとも切断されていたであろう。
俺は女の腹に肘鉄を食らわす。女は うぐっ と、うなってその場に倒れた。俺は女の上に
馬乗りになり、両腕の自由を封じ完全に押さえ込んだ。
やっと捕まえた。やっとこの日が来た。俺は女の胸に額をうずめ、湧き上がる激情に身を振る
わせた。涙がとめどなく流れ落ち、女の胸を濡らす。
「捕まえたぞ・・・・」
「私を殺すのか?」
俺は返答をためらった。俺はこのまま女を捕らえた興奮と喜びを永遠に味わっていたいと感じていた。
しかし、しばらく間をおいて
「すぐには殺さない」
と答えた。
「お前は、軍にも政府にも渡さない。」
「なぜだ?」
「軍の荒くれどもに渡せば、お前は嬲り殺しにされるだろう。政府に渡しても同じだ。万が一処刑を
免れても、二度と俺はお前に近づくことが出来なくなる。」
「私を殺したいほど憎かったのではないのか?」
「憎いさ。お前の独裁のせいで、多くの人が死んだ。父も母も兄弟も・・・・。本当は殺してやりたいさ。
だが、お前の肉体を滅ぼしても、悪魔の女王の魂は残る。邪悪な魂をこそ滅ぼさなければならないのだ」
「まるで、神父のようなセリフだな」
「そうだ、俺は神の使いだ」
「ふふふ・・・・・神の使いか。 神の使いが魔女を犯すというのか?」
女王に矛盾をつかれ、一瞬俺は自分のやろうとしていることを恥じそうになった。俺の女王に対する
怒りと憎しみは常人のそれをはるかに超え、逆に愛情に似た奇妙な感情が芽生えていた。
宿敵である女王と俺は今宵一体となった。
正義を司る者と、鬼女のごとき所業を繰り返してきた者との間に生まれてくる子は果たして、
神の子か、悪魔の子か・・・。それは俺にも彼女にもわからない。ただ、俺達の愛は善悪を超え、
揺ぎ無いものに変わろうとしていた。
以上は、新着順21番目から30番目までの記事です。
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